■参加者 約200名

  内訳 一般参加者168名 (建築関係50名、福祉関係52名、医療関係10名、そのほか56名)

       以上のほか(特活)ユニバーサルデザインシステムの会員18名なども参加した。


 

開会のあいさつ

 


司会 ただ今より、「静岡フォーラム2003。気持ちの良い在宅介護のために」を開催いたします。開催に先立ち主催者を代表いたしまして、静岡県健康福祉部長寿健康総室長、鈴木孝治より皆様に開会のご挨拶をいたします。

 

鈴木(静岡県健康福祉部長寿健康総室長) 皆さんこんにちは。県の長寿健康総室長の鈴木でございます。このフォーラム2003の始まりに当たりまして、主催者を代表いたしまして一言ご挨拶を申し上げます。ご来場の皆様方には、当フォーラムの趣旨にご理解を賜り、ご多忙の中をご参加下さいましてありがとうございます。心からお礼を申し上げたいと思います。

 皆様方ご承知のとおり、我が国の高齢化というのは急速に進展をしております。諸外国もかつて経験したことのないような高齢社会。この本格的な高齢社会が間近に迫っております。

 こうした状況の下で、高齢になっても誰もが健康で快適に暮らすことを望む一方、寝たきりや、痴呆等により介護を必要とする人も、現在の約300万人が、20年後には500万人ぐらいに増えるだろうと見込まれております。

 我が国の高齢者介護の歴史を振り返ってみますと、昭和38年の老人福祉法の制定を皮切りにいたしまして、昭和40年代の老人医療費の無料化であるとか、あるいは昭和57年の老人保健法の制定等、高齢化率の上昇に合わせまして、その時代、時代の要請に応えて発展をしてきたという歴史がございます。

 そして、今から3年前の介護保険制度のスタートが、高齢者介護を、従来の行政による措置から契約へと、そして、誰でもが必要な時に権利として介護サービスを受けられると、こういうような大きな転換をもたらしてきました。

 このような変遷を経ました高齢者介護で、私たちが目指すべき方向は、たとえ介護を必要とする状態になった時でも、可能な限り住み慣れた環境の中でそれまでと変わらない生活を続け、最後まで人間としての尊厳を持ってその人らしい人生を送れるように、こういったことを支援することであると思います。

 本日のフォーラムは、介護保険制度が第2期事業運営期間に入った中で、介護保険制度における住宅改修の現状とその問題点を明らかにしまして、本来の高齢者、障害者の生活環境はどうあるべきか。これらにつきまして検討し、私たちの気持ちの良い在宅介護と住まいにつきましての可能性を探ろうとするものでございます。

 ご出演をお願いいたしました先生方には、大変お忙しい中をお引き受けいただき、本当にありがとうございます。感謝を申し上げたいと思います。

 基調講演の講師には、地域ケアシステムの第一人者でございます、神奈川県立保健福祉大学の太田貞司教授をお招きいたしました。『地域福祉と「日常生活」―健康・医療・福祉と住環境の共通理解を広げる―』をテーマにご講演をお願いしております。  また、パネルディスカッションでは、高齢者、障害者の住環境整備の専門家であります、都立保健科学大学の橋本美芽助教授をコーディネーターにお願いいたしまして、県内の介護現場で活躍されておられる専門家の方々に、気持ちの良い在宅介護につきましてご討議をお願いしてございます。

 これらのいずれも今後の在宅介護につきまして、新たな次元を切り開くための有意義なご提言をいただけるものとご期待しております。

 また、フリーディスカッションのお時間も設けてございます。ぜひとも、ご来場の皆様方に積極的なご参加をお願いしたいと思います。

 結びに、このフォーラムにご参加いただきました皆様方にとりまして、これからのあるべき高齢者介護について考える際の大きなきっかけとなることをご期待申し上げまして、私のご挨拶といたします。

 

司会 続きまして、事務局を担当いたしました、NPO法人ユニバーサルデザインシステム理事長、大河内昭宏より本日の進行について簡単にご紹介させていただきます。

 

大河内(NPO法人ユニバーサルデザインシステム理事長) 皆さんこんにちは。このフォーラムの事務局を承っております、NPO法人ユニバーサルデザインシステムの代表の大河内です。

 お忙しい中お運びいただきましてありがとうございます。

 このフォーラムの進行につきまして、私の方から簡単にご紹介させていただきます。

 フォーラムは3つの場面をご用意してございます。一番最初に太田先生より基本的な在宅介護の考え方、そうしたことについてお話をいただきます。その後、介護の現場、福祉の現場として、住宅改造の現場というお立場で働いている、現場に立たれている方々によるパネルディスカッションを聞いていただきます。

 そして、引き続きご来場の皆様方を交えまして、4つの分科会に分かれてフリーディスカッションという形を取らせていただきます。

 最後にその内容をまとめまして、座長からご報告をいただき、コーディネーターから統括をしていただきまして、終了させていただきます。

 休憩は、基調講演の後10分ほど取らせていただきます。パネルディスカッションとフリーディスカッションの間に休憩は設けてございませんが、フリーディスカッションの間は、立ち席自由、各分科会へ回ることも自由となっておりますので、その間に適宜お取りいただければと思います。

 ここで皆様に一つだけお願いがございます。フリーディスカッションの際、まず分科会ごとに分かれていただきまして、その後、座長の指示で、恐れいりますが、分科会ごとにまとまる形で椅子を移動させていただきたいと存じます。ご協力を宜しくお願いいたします。詳細につきましては、後ほどアナウンスさせていただきます。

 以上、本フォーラムの進行につきまして、簡単に説明をさせていただきました。もし不明な点がございましたら、首からこうしたカードを肩がけしておりますスタッフに何なりとご質問下さい。

 それでは、ごゆっくりフォーラムをお楽しみ下さい。失礼いたしました。


 


基調講演

 


司会 これより、太田貞司(ていじ)先生を講師にお迎えいたしまして、基調講演をお願いいたします

 テーマは『地域福祉と「日常生活」−健康・医療・福祉と住環境の共通理解を広げる』です。

太田先生は1947年生まれ.福祉事務所、病院、保健所のソーシャルワーカーとして長年勤務の後、県立広島女子大学などを経て、2003年より神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部教授をなさっておいでです。

主な著書に「地域ケアシステム」、「高齢者福祉論」、「ハウスアダプテーション用語論」、「退院計画と地域ケア」などがあります。

それでは、太田先生お願いいたします。

 

太田(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部教授) ただ今ご紹介いただきました太田と申します。今日お招きいただきましたのは、大河内さんとのご縁でございます。住総研「住まいづくりフォーラム」、「住宅改造を地域で取り組む全国の経験を集めて皆で議論しよう」というフォーラムで、大河内さんとご一緒になり、お話をいただきまして参りました。

 今日は保健・医療・福祉の関係者と、特に住環境、住宅の関係者が一緒に取り組む意味をご一緒に考えさせていただきたいと思います。

 「地域福祉と日常生活」というレジュメを用意させていただいております。「日常生活」。何気ない言葉ですが、なかなかわかりにくいと思います。副題には「共通理解を広げる」と書いてありますが、「日常生活」ということが、共通理解にとって、とても大事なことなのではないかと、私はフォーラムの活動などで思うようになりました。

 順を追って話をさせていただきたいと思います。

 最初に「先進諸国と高齢者ケアの経験と日本のこれから」ということですが、特にここでは、住宅改造が日本の高齢者ケアの取り組みにとって、大きく差し迫った―このような言い方をしたら極端かもしれませんが―ほかの先進国とは違った日本的な課題であるということです。

 2番目は、住宅改造というのは、地域の中の保健・医療・福祉だけではなく、地域全体の総合力だろうと思うのです。専門職の力を集めた総合力がないとなかなかできないのです。その総合力を作り出す源泉の1つは、「日常生活」ということの理解にあると思います。

 3番目は日本の高齢者介護の考え方です。

 改めて支援の意味ということを考えてみますと、私たちは何のためにその支援をするのか、ということが重要だと思います。もちろん、家族の介護の軽減も大変重要でありますけれども、私は障害を持っている一人一人の方々、高齢者の自分自身の日常生活を作っていくことをどのように支援するか、ということが大きな課題ではないかと思うのです。

 

●住宅改造が90年代に重視されるようになってきたのはなぜか。

 まず、一体なぜ、住宅改造の問題が、90年代になって本当に大きな課題になってきたのか、ということです。

 ほかの先進国の場合、すべてではありませんが、80年代に入ったら施設を利用する方々が65歳以上高齢者比でみると減って参りました。地域 ケアへの転換が始まっていったのです。

 でも、先進国でも、グループホームなどの様々な取り組みをすることによって下がるとしても、「施設は65歳以上高齢者比で5、6%は必要ではないか」と80年代では言われておりました。

 一方日本の場合、90年代初頭、入院は多いのですが、長期施設は少ない国だと言われておりました。

 だいたい日本の場合、様々な動きを見ながら65歳以上高齢者比3%くらいを目標にしてきた、というように見てもいいかもしれません。それは特別養護老人ホーム、老人保健施設の利用者、長期入院者を3%くらいとみていたということです。

 介護保険になりましたら、介護保険施設の利用者を65歳以上高齢者比で3.4%を目標とするようになります。今年それを見直して、3.2%に下げる目標を立てました。グループホームを入れて3.5%です。これは何を意味しているかというと、先進国の中でも、かなり在宅にシフトした地域ケアのシステムを作ろうとしているのです。その数値をもとに、足りないところは施設を作っていく。多いところは、できるだけ、施設から在宅に持っていく方向に向かおうとしているのです。

 そのため90年代、私たちは3つの課題を同時に解決することを迫られるようになります。1つは病院の機能の見直しです。

 もう1つは長期ケア施設の整備です。3つめは在宅のサービスの整備です。

 この3つを同時にしていくとのはなかなか大変なことです。先進国でもだいたいこれは順番にやってきたと思うのです。日本はいっぺんにやろうとしています。

 しかも、施設はできるだけ住みやすくするために一般の住宅に近づける。あるいは、できるだけ在宅でケアするために現在の住宅に住めるようにする。ということが課題となって、住宅改造が90年代に大きく注目されることになった、と言っていいだろうと思います。

 そのために地域のシステム作りがとても大事になってきたのです。一人一人の高齢者、障害者を援助するためにケアマネージメントの考え方も導入されましたが、ケアマネージメントが充分に機能するためには、地域ケアの基盤がなければうまくいきません。

 

●誠和園における「日常生活」の30年の変化。

 ネットワークを作っていく力は「日常生活」の理解にあると思います。

 広島の誠和園の開設は1970年です。初期のころの施設です。日本でかなり特別養護老人ホームができていますけれども、100番目くらいにできた老人ホームです。ここの老人ホームの取り組みを見れば、要介護者の支援のあり方がよくわかると思います。

 男性が手に何を持っているか一番後ろの方見えますでしょうか。ビールの缶です。ビールの缶の銘柄まで見えますでしょうか。キリンビールです。広島はだいたいキリンビールに決まっています。キリンビールをよく飲むのです。キリンビールの工場がありました。

 この方は脳卒中の典型的な後遺症の方です。このような方が特別養護老人ホームの一般的な対象者だったのです。隣の方は痴呆症状の方ですけれども、こうした方は1984年以降にならないと特別養護老人ホームの対象にならないのです。それまでは精神病院の対象だったのです。この男性のような方がどのように支援されて、この方の日常生活がどのように変わっていったのか。そこで、いろいろな職種の人が、どのように関わったのかということを考えてみます。

 この写真は今から10年ほど前の写真ですが、この写真は、日本の介護の問題を考える上で非常に重要な写真です。

 さらに10年遡ります。84年の時の写真になります。ちょうど国際障害者年の少し後です。老人保健法の施行された少し後、地域の中で保健医療福祉が連携しようと言われた時期です。80年代になりましてから、介護の問題が社会的な問題に少しなったころの写真です。同じ老人ホームでの写真です。

 先ほどと感じが違います。ここは50人定員です。50人定員のうち、自分の力でベッドから降りることができなかった人が38人いたのです。後の12人は、自分の力でベッドから降りてトイレに行く、食堂に行く、お風呂に入ることができたのです。残りの38人は、この少し前まではベッドから離れることはありませんでした。そのような生活をしているのです。日常生活というのはベッド1枚の生活だったのです。

 これは先ほどと服装が随分違います。夏と冬は違いますので、この方々の感じが随分違うと思うのですが、楽しそうにしているのは利用者ではなく、むしろ後ろの援助している側です。これは初めて運動会に参加したような戸惑いがあるような状態です。これから更に10年遡ります。

 これは同じ老人ホームの写真です。ベッドから離れられなかった時代の写真なのです。何をしているか皆さんおわかりだと思うのですが、施設の行事でスイカ割に参加している写真です。しかも皆さんおかしいでしょ。ベッドの上に乗っています。居室をこれまで出たことのなかったので、スイカ割りにも参加したことがなかった。これはあんまりだということで、ベッドごと引き出してきて、すいか割に参加した記念写真なのです。しかも当時の支援の最高レベルを示すともいえます。

 実はこの写真を見て私も笑えないのです。私も当時は同じようなことをしていました。ベッドごと日光浴するとか、そのようなことを行っていったのです。問題はこの方の障害なのですが、こちらの棒を持っている手に大きな障害があるとも思えません。こちらはよく見えませんけれども、この手に大きな障害があると思えない。多分この方の障害は下肢にあるだろうと思います。

 先ほどのビールを飲んだ方と、この方を比べてみますと、この方は上肢は使えますので、かなり日常生活は自由になります。ですから今の介護保険の介護度で言うと、こちらの方の方が軽いはずなのです。

 2つ前のスライドに戻していただけますか。この方は脳卒中の片麻痺です。しかもビールを飲んでいます。それからきちんと服を着ています。しかもボタンが付いた服を着ています。それからパイプ椅子に座っています。このような生活を何気なくしていますが、そういう支援をしているのです。これがこの20年間の差なのです。元に戻していただけますか。

 この方は車椅子に乗っていません。どうして車椅子に乗らなかったと思いますか。車椅子に乗って生活してもいいはずです。どうしてだと思いますか。

 学生に聞くとこのように言います。「車椅子が発明されていなかった」。75年頃の日本でそんなことはありません。車椅子がなかったのではなく、倉庫にしまってあったのです。

 移動の時はどうするかというと、この当時は病院のストレッチャーを利用していたのです。車椅子に乗る発想がなかったのです。この方はベッド1枚の上が生活です。しかもその上で支援するということが援助だと私たちは考えていました。だからベッドの上でご飯を食べる。排泄をする。排泄はトイレへ行けませんのでオムツをするのです。お風呂も、この上ではお風呂に入れませんので、清拭を考えたのです。それが支援だと。ですから、この当時は看護婦さんとケアワーカーだけが関わる世界です。

 介護福祉は後で年表を見ていただくとわかりますけれども、87年に国家資格ができます。介護福祉の技術の中に、車椅子に乗って移動するということが、とても重要な技術になっていくのです。このようなことを実は気が付かなかったのです。

 これは梶平タツさんという誠和園のヒロインと言われた人です。1974年に脳卒中で倒れて、軽い、軽い脳梗塞なのです。半年間歩けたのですが、腰を痛めて歩けなくなるのです。76年にホームにやってきます。それから92年までここで暮らされます。随分長い間です。この方が亡くなる少し前の写真です。

 これはご自分の食事を運んでいるわけではなくて、仲間の利用者に食事を運んでいるところです。次を見ましょう。

 これは、梶平タツさんの若い時の写真です。同じ方です。先ほどのスイカ割りの時代の写真です。UCCの缶コーヒーが写っていますけど、地域の方が置いていった慰問の際の記念写真らしいのです。

 1982年に4人の新しい職員が入ってまいります。1オムツを交換する時にお尻を上げるのです。それを見て4人の方が、何も専門的な勉強をしていたわけではありませんが、このように見抜くのです。「この方はひょっとしたら歩けるのではないか」と。

 それはなぜかというと、身体に麻痺があると、お尻をグッと上げるという複雑な行動はできないのです。そのことを素人ながら見抜くのです。後で三好春樹さんや、この園を支援された医師たちにその意味をいろいろ教えられるのですが、とにかく見抜くのです。

 それで「歩いてみようかい」というように広島弁で言うのです。大きく梶平さんはうなずきました。「歩いてみたい」。半年間歩く訓練をするのです。何年も歩いていないと歩けないのです。それで半年間練習しましたら、少しずつ歩けるようになりました。園から出て広島の原爆記念公園に行ったり、町のお店屋さんに行ったり、生まれた所の家に一泊里帰りと言っていましたが、そのような生活が始まります。

 残りの37人は、自分の力でベッドから降りることができない。梶平さんがトイレにも行く、食堂にもご飯を食べに行く、それを見て、最初は「苦労してまでそのような人生を送るか」というように言っていました。しかし少しずつこのように考えるようになりました。「苦労してでもいいから、自分で食堂に行く。トイレに行くというのは、自分にとって本当に生きている気持ちになる」、というように思うようになっていきます。

 1人、2人とベッドから降りる人が増えてきます。しかし、ほとんどの人がベッドから降りるまで6年かかりました。90年のことです。

 そんな中で職員、利用者はこのように考えるのです。最初、職員はこのように考えていたのです。今のお医者さんは違いますが、当時は「脳卒中の人は動かしてはいけない、危険だ」と考えていた。当然、看護婦さんもそう思います。今はそのようなことはありません。また、職員はトイレまで行く。あるいは「食堂に自分で行く」と言うと、「私は5時に帰れない。そんなことしたら大変だ」と思います。当然職員の中にも反発がありました。ですが、一人一人の生活を見ていると大きく変わっていくのですから、やはりそのような支援が大事だと変わってまいります。そのことを職員、利用者の人たちを励まし続けたのが、梶平さんだったのです。だからヒロインと言われていたのです。

 このようにして大きくベッドから車椅子へ。車椅子で自由に動くようにようやく変わっていったのです。これが介護保険の時に言われた「自立支援」ということなのです。今それぞれの施設に行かれても、1日中ベッドにいる方は少ない。これはいない方がいいということではなくて、ターミナルの方とか、どうしても静養が必要な方がいるのですから、ゼロにするということではありません。しかし、施設の中で、ベッドから離れない生活をしているということは、日本中の施設では基本的になくなりました。このように変わってきたのです。

 今はもう少し進みまして、車椅子に座る。そして車椅子に縛っているのはよくないという時代に少し変わってきたのです。ベッドから車椅子へというように変わってきました。英語で言いますと、ベッドバウンドからチェアバウンドの時代に変わってきたのです。

 車椅子の時代になりますと、当然理学療法士さんの役割が大きくなります。同時に、生活を支援する人たちの役割も大きくなってまいります。まず第一に、ケアワーカーの人は移動の援助をする。移動だけではなくて、移動してその人がどう生きるかということを支援する役割。心理的な役割というのが、大変大きな役割になってまいります。同時に施設の行動を自由にしていく住環境の問題が、大変大きな課題になってくるのです。

 ですからこの誠和園は、一般浴槽、車椅子ごと入れるお風呂などに、日本で初めて全面的に切り替えた施設として有名になります。これが80年代の後半です。その時に大きく住宅や住環境の役割ということが、実は大きな課題になってくるのです。先ほどの資料のところの80年代の後半から90年代にかけて、住環境の問題が大きくクローズアップされてくるのです。ですから、連携というのは、その人、一人一人の生活の考え方、技術と実は大きく結びついているのです。

 

●地域で暮らせるような仕組みづくり。

 少しお話を進めさせていただきたいと思います。地域福祉と日常生活の支援。今スライドを見ていただきまして、少し思い出していただけたと思いますが、日常生活の支援をしていく考え方が随分変わってきたということはおわかりかと思います。

 これは障害者の生活の考え方の転換でもありました。私たちの転換でもありました。地域の中で支援していくということですが、「地域で暮らせる仕組みづくり」。このように言われます。しかも施設や自宅でない在宅、そして自宅をいかに組み合わせるかというのは、一つのこれからの課題です。

 しかも、虚弱の人も、軽度の障害がある人も、終日ケアというのは目が離せない人の誰もが、日常生活ができるように支援していくというようになっています。

 ところで「日常生活」という言葉はよく使われます。日常生活ということは、実は大変難しい言葉だろうと私は思うのです。「あなたの日常生活とは何でしょうか」と言って皆さん何と答えますか。介護保険でも要介護者は、心身に障害があり、日常生活を営むのに障害のある人のことを言うのですが、日常生活は大変簡単なようで、実は簡単ではありません。ちなみに国語辞典を調べて、日常生活というのを引いてみていただければわかると思います。簡単に普通の生活や当たり前の生活とか書いてありますけれども、それ以上詳しいことは書いてないのです。

 社会福祉法と社会福祉の法律の基本法みたいなものです。それが2000年に改正されました。介護保険の施行と同時に改正されました。そこの3条と4条に大事なことが書かれています。

 第3条には「その有する能力に応じて、自立した日常生活を営むことができるように支援する」と書いてあります。第4条では地域福祉の考え方を、地域社会を構成する一員として、つまり誰もが暮らせる社会として日常生活を営めるようにすると書いてあります。日常生活を支援する目的が社会、経済、文化、その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられるために日常生活を支援すると書いてあります。

 ホームヘルパーの制度があります。ホームヘルパーの制度は、高齢者と精神障害者と知的障害者と身体障害者と、それぞれ分かれています。ホームヘルパーというのは、日常生活の支援する役割なのです。日常生活を何のために支援するかということが、微妙にニュアンスが違って書かれているのです。

 精神障害者の場合はこのように書かれています。「社会復帰のために日常生活を支援する」とあります。日常生活は社会復帰するための土台なのです。暮らしていくための土台なのです。

 知的障害者、身体障害者の場合はこのように書いてあります。「自立と社会参加」と書いてあります。

 高齢者の場合はどうかと言うと、もちろん、「自立支援」とはうたっているのですが、高齢者の特性からいっても若い障害者と同じようには言えないのですが「何のために日常生活を送るのか」というところがうまく書かれていないのです。介護保険は、日常生活の基礎部分を支援するということになりがちですが、それだけでは生活が成り立たないので、様々なサービスと組み合わせなければいけないことになっているのです。ですから、生活支援事業とか、住宅改造とか、いろいろなサービスを組み合わせながら地域を支援していくということが大事だと言われているのです。そこが介護保険のホームヘルパーたちの悩みであり、ケアマネージャーの悩みでもあります。住宅改造している人たちの悩みでもあると思うのです。

 介護とか日常生活というものを狭く見たら、多くのいろいろな分野の人の結びつきができません。多くの人が「生活を私たちがどのようにみるか」、「日常生活をどのようにみるか」ということを、また、本当に障害を持っている人たちが地域で暮らすのに何が必要かということがわかるのに、やはり時間がかかると思います。

 ですから、生活とか暮らしということを共同で学べる場が地域の中に必要だろうと思うのです。そのこと無しに制度が変わることはないし、多くの専門知識の人たちが、本当に自分たちの役割を果たそうということも、思うようにはならないと思うのです。

 そのような意味で、今日のフォーラムとか、ユニバーサルデザインシステムの活動、これは県と一緒にパートナーシップでもってやろうという、そういう今日は集まりでありますけれども、こういう場というのはとても大きな今後の力になって、日本の高齢化社会を支えていく力になっていくのではないかというように思います。そのことが、私は共通理解の大きな鍵ではないかということをお話しさせていただいて、終わりにさせていただきたいと思います。

 後半のお話を私も聞かせていただいて、ぜひ勉強して、静岡の経験を他の地域でもぜひお伝えしたいというように思っております。大変どうもご清聴ありがとうございました。

(講演で使用した写真は誠和園からお借りしたものです。お礼申し上げます)

 

 

司会 太田先生ありがとうございました。ここで10分間の休憩をいただきます。



 

パネルディスカッション

 

 


司会 これよりパネルディスカッションに入ります。

 コーディネーターを橋本美芽様にお願いいたします。橋本様は、東京都立保健科学大学保健科学部作業療法学科助教授をされておいでです。一級建築士でもあり、東京都社会福祉総合センター住宅改造相談員を経て、横浜市総合リハビリテーションセンター企画研究室で、障害者・高齢者の住環境整備に関する研究に携わり、障害者・高齢者への新築住宅設計や改造の相談指導業務に従事されておいででした。主な著書に、「新時代に求められる老年看護」、「介護福祉士のための福祉用具活用論」、「要介護高齢者のための住宅リフォーム」などがあり、福祉住環境コーディネーターのテキストの分担執筆もされておいでです。

 次にパネリストをご紹介いたします。

 秋山恭延様。共立菊川総合病院リハビリテーション課主任で、静岡県作業療法士会理事(教育部長)を務めておいでです。

 深沢啓子様。NPO法人ワーカーズ夢コープ理事で、元静岡市立麻機小学校教諭をされ、現在はヘルパーとして、ケアマネージャーとして、幅広く采配を振るっておいでです。静岡県社会福祉審議会委員をなさっておいでです。

 西村伸介様。福祉住環境コーディネート西村事務所主宰。建設会社在勤中に日本社会事業学校で社会福祉について学ぶ。同校卒業後、社会福祉法人に勤務し、特別養護老人ホームでの介護職、在宅サービス部門でのケアマネージメントなどを経験され、一級建築士。福祉住環境コーディネーターをされています。主な著書に「介護保険で住宅改修」、「訪問看護のための在宅リハビリテーション」があります。

 山田洋一様。NPO法人ユニバーサルデザインシステム副理事長。理学療法士。静岡リハビリテーション病院リハビリテーション科主任。静岡県高齢者総合相談センター専門相談員。静岡市介護認定審査会審査員。健康運動指導士。福祉住環境コーディネーター2級です。

 では、以上の皆さまで3時30分まで、橋本先生どうぞよろしくお願いいたします。

 

橋本 東京都立保健科学大学の橋本でございます。今現在は、ご紹介がありましたような大学に所属しておりますけれども、1年ほど前まではリハビリテーションセンターの一相談職員として、住宅改修のご相談に関わってまいりました。そのような経験から、コーディネーター役を仰せつかわりました。今日は最前線で大変ご活躍の4名のパネリストの方のご発言をいただきながら、パネルディスカッションを進めてまいります。どのようなお話が出てくるのか、実は一番楽しみにしておりますのは私でございます。

 今日は、現場で実際に担い手となっていらっしゃる様々な立場の、今日みえている方々が抱えていらっしゃる常日頃からの悩み、問題点、要望、そのようなことをこの場で明らかにしていただいて、会場にいらっしゃる皆様と認識を共有しつつ、問題点を明確にして、今後の活動のあり方、方策のあり方、支援のあり方、そのようなことにお話を繋げていけるようになればと考えています。

 このパネルディスカッションの後、分科会がありまして、皆様もご参加いただいて、より忌憚のないご意見を交換できる場所を設ける予定でございますので、この場ではとても議論が尽くせないことは分科会にも話を繋げていければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは早速、パネリストとそれぞれの方の今現在の活動のご様子、それぞれの立場というものを会場の皆様にご紹介する意味もありまして、お一人5分程度ずつ、それぞれの日常業務のこと、活動のことをご報告いただいて、それからパネルディスカッションに入りたいと思います。

 それでは、秋山さんからお願いいたします。

 

秋山 ただ今ご紹介に預かりました、共立菊川総合病院の作業療法士の秋山と申します。よろしくお願いします。

 私はトップバッターといたしまして、医療の現場での在宅サービスへの取り組みを紹介しまして、現在の問題点と今後の展望について意見を述べたいと思います。

 共立菊川総合病院は、菊川町と小笠町の共同出資の公立病院です。菊川町は静岡県西部の中東遠地区に位置し、牧之原大地にあるため病院の周りには茶畑が広がっています。もちろん住民の方もいらっしゃいますが、裏庭はこのような感じになっています。菊川町と小笠町の高齢化率は約18%です。

 菊川病院は平成10年に現在の郊外に移転しました。病床数は270床です。少しこれをご覧下さい。暗くて申し訳ありません。PTが4名、OTが3名、内1名は精神科専従になりますので、実質は2名で身障の業務を行なっております。STは1名です。赤の字で少し見えにくいですが、在宅支援室2名と書いてあります。これは非常に重要な役割で、リハ科直属の職種ではないのですが、在宅復帰に向けてのコーディネートを行なってもらっています。ここが機能していかないと社会的入院が増えてしまう実情があります。

 私どもは、在宅指導については、退院前訪問指導という医療サービスの枠内でその関わりを持っています。退院前訪問指導では、退院前に患者様のお宅を直接訪問しまして、在宅生活上必要とされる指導を行なっています。

 具体的な内容は、住宅改修のアドバイス、福祉用具の選択、自主訓練指導、介護指導などです。退院前訪問指導の指導料は3,600円ということになります。一回が原則になっています。

 続きまして、菊川病院で実施しました昨年度訪問指導について報告いたします。

 昨年度1年間のデータですが、対象者、実施回数は31回で、平均年齢が79.3歳です。注目してもらいたい点が、退院後の情報、あり6件、なし25件ということで、8割から9割というのは退院後の情報がないのです。指導しっぱなしという実情があります。

 菊川病院の特徴なのですが、利用者が菊川町、小笠町で約9割を占めているため、片道約20分以内で訪問できるということがありまして、気軽といったら本当に失礼なのですが、業務の合間を抜けて訪問に行ってくることが可能です。

 次に対象者の内訳です。日常生活の自立度でJランク、Aランクとありますが、比較的自立性の高い部分が4分の3くらいを占めています。重度な方はほとんどいらっしゃいません。痴呆の障害では、なしが半分程度です。5が一番重いランクですが、4、5はいらっしゃいませんでした。比較的軽い方が多いといった傾向です。

 次に訪問時の同行スタッフです。担当者のみで訪問したケースが6件、後は在宅支援室に関わってもらっています。ここで淋しいのは、建築業者さん等が同行していただいたケースが2ケースしかありませんでした。この辺が少し問題であるかなと思われます。

 続きまして、指導箇所別に分けてグラフを作ってみました。アプローチ、玄関、廊下、寝室、トイレ、浴室なのですが、ピンクが住宅改修の割合です。黄緑が福祉用具の導入のアドバイスをしたケースですが、トイレ、浴室がだいたい半分程度というような傾向です。寝室7割とあるのは、ベッドを勧めたケースがほとんどです。

 続きまして、先ほどの日常生活の自立度を2群に分けてグラフにしてみました。重度な群と比較的軽度な群ということでピンクが改修です。重度な方になりますと、どうしても改修よりも福祉用具で済ませてしまう傾向が強いです。多少動けて危険を伴う箇所に改造、手すりを付けたりする傾向があります。

 問題点と今後の課題ですが、退院後のフォローが不充分という点が挙げられます。これはケアマネとの連携が不充分であること、退院後の訪問指導が診療報酬として認められていないところが理由として考えられます。

 そこで当院での取り組みですが、今年の4月から電話での情報収集を行なっています。退院後1ヶ月から2ヶ月経った時点で、お宅の方に電話をかけて状況を把握するということです。必要があれば再訪問を実施するといった活動を行なっています。

 利点はやはり指導内容を直接担当者にフィードバックできるということ。そのようないろいろな経験が次のケースに生かせるということで、教育的⊡技術的な向上にも繋がるのではないかと考えています。

 問題点といたしましては、サービスの対象外ということです。病院にとっては報酬がないところが問題になっています。今後、ケーススタディを科内で実施して、いろいろな話し合いを持ちながら、経験の浅い療法士をフォローしていくという取り組みをしていかなければならないかなと考えています。

 私は、作業療法士会の理事をさせていただいております。一般的な問題点というものを私的に考えてみたのですが、やはり、リハスタッフの経験不足というところが一番ではないかと思います。どうしても、入院中の最高のレベルで退院後の生活環境を設定してしまうという傾向が強いようです。退院後の自立レベルの変化を予測すること。レベルの変化に即した住環境の整備の可能性を考慮する。後は優先順位などを考えて、環境整備における選択肢を示唆して、家族、患者様本人が選んでいただく形がベターではないかと考えています。

 県作業療法士会の活動としましては、卒後教育、研修会の開催というものを開いて、技術的な向上を全体的に図っていきたいと考えております。私の方の発言は以上です。とりとめもなく問題点まで挙げてみましたが、次の方にお話を任せたいと思います。ありがとうございました。

 

橋本 ありがとうございました。それでは次に、深沢さんにお願いしてよろしいでしょうか。

 

深沢 NPO法人ワーカーズコープ夢コープのケアマネージャーをしております深沢啓子と申します。よろしくお願いいたします。

 私たちの組織は1999年9月16日にNPO法人の認証をいただきました組織なのですが、当初は1991年3月に在宅サービス、ホームヘルプサービスを提供していきたいという思いで、「コープしずおか」の組合員の人たちと一緒に、皆で作りあげた有償ボランティアの任意団体です。

 「喜んでいただければいいね」。「将来は私たちが使える組織を作りたい」。「私たちもいつ障害を持つかわからない。そのような障害者の予備軍だ」という考えの下に、「私たちが使える高くない料金でいつでもサービスの利用ができたらいい」というホームヘルプサービスを、「コープしずおか」の組合員で、皆で作りあげたのです。

 13年目になりますが、「本当に喜んでいただければいい」。「隙間を埋めていきたい」。いろいろなところで隙間というのはどうしても生じますので、そのようなところを私たちが「少しでも埋められたらいいね」という思いの下で、「いきいきライフ講座」と名付けた福祉の勉強会を修了した者を中心に、設立させていただきました。

 1999年9月に法人格を得て、介護保険の指定事業者の申請をして、「くらしの助け合い」と呼んでおります有償ボランティアの部分の仕事に加えて、介護保険の中での居宅介護支援、ケアマネージャー、ホームヘルプサービスと訪問介護の2つのサービスの仕事をさせていただいております。

 私たちは、「喜びを運ぶサービスでありたい」と思っております。その人らしい生活の自立支援−私たちは自立ということを、ご自分の足で立ったり、いろいろなことができる意味での「日常生活を自分でする」という意味で考えていますが、「自分の生活を自分で決定していく」という自己決定の部分を私たちホームヘルパーやケアマネージャーがどれだけ支援できるか、援助できるか。声かけによって気力をどれだけ持てるか、にお役に立てるような「そのようなヘルパーになりたいね」という思いで、私たちは常々サービスを提供させていただいております。

 私たち「くらしの助け合い」の利用者の方たちが、介護保険の対象になった場合に、「夢コープのヘルパーに来てもらいたいよ」と言って利用していただけるように、介護保険に参入できるよう法人格をとりました。ケアマネージャーの資格は、私は平成10年の最初の年にどさくさにまぎれて試験を受けて受かったようなケアマネージャーなのですが、今、夢コープにケアマネージャーは18名おります。

 介護福祉士も、「くらしの助け合い」では、もちろんなくてもいいのですが、私たちは専門性を付けよう、質の高いヘルパーを目指そう、そのために勉強したいという者が、誰からの指令でもなく、自主的に試験を受けて取得しました。そのような者達が寄り集まって、今現実的にヘルパーは1000人近くおりまして、静岡県全域で仕事をさせていただいております。

 介護保険の事業は、県内の6事業所でやらせていただいておりますが、私たちは選ばれるヘルパー、選ばれる組織であるために、研修にとても力を入れているつもりでございます。利用者の方たちの生活の質を高めて、自立支援を、利用者が自分で自己決定できるようになっていただけることを援助できるサービス事業者でありたいと思ってやっておりますが、「くらしの助け合い」は月に10000時間に少し足りませんが9800時間、介護保険の方はホームヘルプが6月に10000時間を越えまして、合計で20000時間のサービス事業をさせていただいております。

 介護支援の方はケアマネージャーの数×50とはいきませんが、400件近くやらせていただいております。訪問回数も、「1回ではなく、何回もできたらいいね」という形で中身を濃くと、常に利用者のニーズに沿った、利用者本位の柔軟性のあるヘルプ活動を目指してやらせていただいております。よろしくお願いいたします。

 

橋本 では西村さんお願いいたします。

 

西村 西村と申します。データをたくさんご覧いただくのですが、皆さんのお手元に印刷物。紙芝居のようなスライドをそのまま印刷したものがありますので、後でもご覧いただきたいと思います。

 私、福祉住環境コーディネート事務所というものを自分で主宰していますけれども、この1年間で行なった工事のデータをそのままご説明したいと思います。

 昨年1年間で約214件工事をした、実際の工事をいたしたのですが、相談を受けた時点でのご本人は一体どこにいらっしゃったか。8割が在宅で2割が入院中の方でした。「退院準備で住宅改修をやろう」と進められたのは2割の方です。

 介護保険が始まってこのようなことが劇的に変わったのですが、相談を依頼した方は8割がケアマネージャーです。その次は1割だけご家族。その他は、病院のスタッフから直接とか、これは退院指導で病院のリハビリ科から連絡をもらったり、その他、訪問看護ステーションとか、在宅介護支援センターというところ、介護保険該当外の方からご連絡いただいたことがあります。

 疾患別の工事件数。圧倒的に多いのは、約4分の1は脳血管障害の後遺症の方。脳卒中などで片麻痺の方が多いです。この病気の方、お体に障害が出ることが多いところがありますけれども、この次は加齢に伴う筋力低下。これは虚弱というようなレベルの方だと思いますけれども、特に重い病気の名前が付いているような方ではない方。大腿部の頚部骨折。結構多いのは、痴呆による動作が緩慢になって、行動の動機付けにしようとか、それを助けようとか、認識の低下があるところを改造によって補おうと。そのほか、ありとあらゆる病気、疾患の方がいらっしゃいます。

 種類別の工事件数。これは、介護保険で定められた工事の種類とほとんど合致するのですが、一番多いのは手すりです。少しの段差を乗り越えようとか、立ち上がりのため、歩行用など、手すりが圧倒的に多いです。その次は段差の改装、建具改造、便器の取り替え、床材の変更、ほとんど介護保険の該当のものです。それ以外の工事も若干あります。

 箇所別の工事件数は、先ほどの秋山さんのお話の中にもありましたけれども、場所で多いのはお風呂とトイレなのです。何とかお風呂とトイレを使いたいという方が非常に多いです。たまたま浴室とトイレが同じ数ですけれども、その後は玄関の出入りの問題です。廊下は主にその方の居室からトイレやお風呂に行く道中としての通路です。あといろいろな部屋があります。案外少ないのは階段なのです。階段を何とか2階に行かなくても1階だけで生活しようとか、そのように判断した方も多いのだろうと思います。

 利用制度別。これも介護保険が圧倒的です。介護保険を利用した方が9割以上いらっしゃるのです。あとは市町村とかによって制度が違いますけれども、介護保険以外の制度を利用した方、介護保険と一緒に使える制度もありますけれども、それを利用した方がいらっしゃいます。介護保険外だけの制度を利用した方は非常に少なかったということです。

 費用別の工事件数。1件あたりの工事です。介護保険の基準限度額である20万以下の工事は非常に多くて約8割です。介護保険の基準限度額が20万で「非常に少ない」ということをよく言われるのですが、私の経験から言うと20万あれば、手すりだけなら、そこそこ家中に手すりを付けるくらいは何とか間に合います。私はそのように思ってやっています。もちろん50万、100万、100万以上の工事も当然ありますけれども、住環境整備について、先ほどもありましたADL。日常生活動作の自立と生活範囲を拡大して、介護する方の負担を軽減しよう。安全を守る住宅内事故が非常に多いのですけれども、特に高齢者の方は、交通事故で亡くなる方と同じくらい、年間数千人の方が家の中の事故で亡くなると言われていますけれども、その安全を守るということもあります。方法として住宅改修は当然ですけれども、福祉用具の活用はいつもセットで考えるべきだと思います。

 お家の中の整理整頓。住宅改修は福祉用具と切り離さないで、いつも一緒に考えてもらいたいのです。後、制度の活用。ここでは少し細かく説明できないのですが、介護保険等あります。様々な社会福祉の諸制度はあります。介護保険の中には、福祉用具の貸与と購入費の給付。そこに住宅改修費用の給付があります。住宅改修費の支給は償還払いで、自己負担が1割となっています。

 住宅改修の種類。手すりの取り付け、段差の解消、すべり防止及び移動円滑化のための床または通路面の材料の変更、引き戸などへの扉の取り替え、便器の取り替え、これらの工事とそれに付帯工事は認められています。

 介護保険以外の制度で、日常生活用具給付という制度があります。これは身障手帳の障害の部位と等級によって違うのですが、このように使えるものがあります。浴槽やリフトがあります。

 住宅改修、用具活用の基準です。とにかく現状を把握するということ。それで計画を立案するのですが、その時に、ご本人、家族の意見調整をし、関連する機関との連携及び制度の確認、申請手続きがあって、業者の選定をし、実施をし、また効果の確認と見直しを継続して行なっていくというような手順が考えられます。工程として退院前の準備の時に、入院中に現況調査をして、設計を始め、見積りをし、工事を進めるのですが、介護保険の場合は償還払いなので、入院中でも要介護認定の申請をしていれば、要介護認定を受ければ給付を受けられるのですが、その他の制度は、許可が出る前に工事をしてはいけないというようになっていますので、かなり早い時点で工事のことを考えていかなければならないと思います。申請をして許可が出て工事をし、場合によっては試験外泊をして様子を見たりして、退院されてそれからフォローがあるということになります。

 最後にまとめです。私はいつも言っているのですが、住宅改修してどのような生活を送るのか。先ほど先生から日常生活という話が出ましたけれども、確かにお風呂やトイレを何とか使えるようにという希望を受けて始めることが多いのですが、「一体その方はこれからどんな生活を送っていくのですか」ということを念頭においた上で、細かいところの話を進めるべきだと思います。ご本人とご家族の納得をということです。

 なかなかこれがご家族の意見の調整がつかないことがあります。例え手すり1本でも、「みっともない」とか、「スロープを作るなんてとんでもない」とか、そのようなご家族の反対で工事が進まないということがあります。

 制度。これはなかなか知らない方にはわかりにくいことなのですけれども、それぞれの市町村に問い合わせすればきちんと教えてくれますから、制度を上手く活用して、特にケアマネージャーさんの役割は大きいのですけれども、私が仕事をしながらいつもここは問題があると思うのは、一体誰が計画して、決定して、責任を負うのかということです。これが曖昧になってなかなか進まないことがあるのですが、それぞれ関わる職種の者が連携を取っていくのですが、最後決定して責任を取ってもらうのはご利用者です。そのための準備、提案できる最善のものというものを提案していくのですが、ここを認識していただきたいと思います。

 あと、工事の写真をたくさん用意してきたのですが、時間がないので次々と送ってもらえると思いますけれども、先ほど資料の一番最初にホームページのアドレスが書いてあるのですが、ホームページをご覧いただければ、今のグラフや写真をたくさん掲載していますので、よろしければご覧いただければと思います。

 

橋本 ありがとうございました。次に山田さんにお願いしたいと思います。

 

山田 よろしくお願いします。ご紹介いただいたのは、今日のフォーラムの事務局を担当させていただきますユニバーサルデザインシステムとして紹介をいただきましたが、本業はユニバーサルデザインではなく、静岡リハビリテーション病院で理学療法士をしております。今日は安倍川の花火ということで、気分だけでもと思いまして、背景だけは花火をタイトルにさせていただきましたけれども、スライドをお願いします。

 これは2月に静岡リハビリテーション懇話会で発表させていただいたスライドを少し持ってきたのですけれども、静岡市での要介護認定者の自宅改修サービスの利用状況ということで、昨年度は約1万200名、その内、居宅改修サービスを利用された方は全体の10%。約1000件というのがデータとして残っています。

 次お願いします。少し暗くて申し訳ないのですが、これは障害者、ホームページに載っていたのですが、静岡市の障害者に対してのアンケートを行なったそうで、その内、このスライドでは読み取れないのですが、かいつまんでお話ししてしまえば、現在の住宅に対して改造を希望している方々は30%いらっしゃいます。身体障害者手帳を持っている方の中で30%いらっしゃいます。改造したくてもできないという方が実はもっといらっしゃるのですけれども、費用がかかりすぎるという方が、その中の60%いるということをこのグラフで示しています。今の住宅改修がなかなかできないという問題を、このスライドで示させていただきました。それからもう1つ、パーセンテージとしては少ないのですが、どこに相談すればいいのかわからないというのが、在宅で生活されている障害者の方々の中では2.1%存在しています。ということを公表されています。

 これはうちの病院で、昨年の4月から今年の1月まで当院退院患者が約370名いらっしゃったのですが、訪問指導を行なった件数が15%、約6分の1くらいです。うちの病院はリハビリテーション専門病院で、脳血管障害の方が約7割、162床の病院なのですが、皆が皆住宅改造を希望されるわけではないのです。57件という件数は1年間にしますと、1週間に1度は何かしら訪問指導でリハビリテーションスタッフが行っている数になってきます。

 次お願いします。私は専門病院に勤めているということもあるのですけれども、静岡県理学療法士会ということを通じて、福祉関係のいろいろな情報、依頼が来ていまして、幸いと言えば幸いなのですが、先ほど秋山さんがおっしゃったように、今病院が抱えている問題。訪問前指導ができてもなかなか退院後のフォローができない。私がNPOに参加したのは、実はそれを解消したくてNPOに参加して、退院後の指導もしっかりできるようなシステムを作りたいという思いでユニバーサルデザインシステムに参加していますが、実は県やこの後出てくる静岡市でもシステムは作っていくということで、協議会の設置等をされています。

 少し暗く見にくくて申し訳ないのですが、これはまず静岡県の取り組みとして、福祉用具、住宅改修、活用広域支援事業推進協議会の設置ということをされています。これは1、2年経っていると思いますが、システムとして、事業としての目標は1から4まで。「福祉用具、住宅改修関係専門家の登録及び活用」、「フィッティング、福祉用具の紹介・購入・取次ぎ及び申し込みができる場の提供」、「援助困難な事例の相談に対応できる自助工房の設置」、「福祉用具製造事業者等に利用情報等を還元できる体制の整備」、この4つの事業として認めていて、今年度中にはようやく1番、「福祉用具、住宅改修関係専門家の登録」のところの作業というのが、何とか今年度中にできる話を聞いています。

 次お願いします。もう一つは静岡市の取り組みなのですが、平成17年度に国立病院の跡地に地域リハビリテーション推進センターというのが開設されるのです。静岡市のホームページをそのまま持ってきたのですけれども、目的としては、障害者及び高齢者が住み慣れた地域、自宅で自分らしくいきいきとした自立生活を継続するために、能力評価に基づく福祉用具の選定、生活行為の改善・向上、住宅改修等の助言・提示、日常生活上の改善・助言等を行なうと共に、在宅を支える医療、保健、福祉職のネットワーク化による、より効果的で総合的な地域ケアシステムを構築して、静岡市独自のノーマライゼーションの推進を拠点とするということで、この地域推進リハビリテーション推進センターというのは、介護保険というものにだけ拘らず、障害者の方々にいろいろなサービスを、行政が仕事をして行なっているセンターを開設する。

 私も今月の7月30日に行って、推進センターの準備室の会議に参加させていただいて、一民間病院としての助言という形で少しお話に加わらせていただくことになっています。

 次お願いします。これも静岡市のホームページから持ってきたのですが、地域リハビリテーション広域支援センターというものがあります。これは、静岡県を4つの県域−現在、広域支援センターというのは4ヶ所あるのですけれども−、この地域リハビリテーション広域支援センターというのが、現実的には、今地域での福祉施設、福祉に関わっている方々に対して、専門的なリハビリテーション機関が啓発活動を行なう事業を行なっています。

 最終的には、少し暗くて申し訳ないのですが、建築の専門家の支援ということになっています。広域支援センターというところが、このようなサービス事業者の支援、啓発活動を行なっていくのです。技術とか、知識の底上げをやっています。こちらからも、医療機関、福祉機関に対してセンターというのが協力をして、その中で在宅生活というものを、退院した後のサポート、ネットワーク作りというものを、広域支援センターというところが協力していく形で、現在うちの病院でも月に1回程度なのですが、いろいろな形で講習会を開いて、ケアマネージャー、それから福祉施設の方々に対して、技術講習会とか知識の講習会というものをやって、フォローワークをしているところなのです。

 最終的には、特に今回のテーマでありますけれども、私たち医療機関の中では、なかなか職種の違う方々と接するというのはとても難しいものですから、医療、福祉の保健、医療福祉という中で、どうやって建築の方々とネットワークを取っていくのかというのが大きな課題になっていて、広域支援センターでも、実はそこのネットワークは少なくて、どうしていくかということでまだ模索中であります。

 次お願いします。これは静岡県のホームページからそのまま持ってきたのですけれども、静岡県独自のこれからの取り組みです。

 静岡県には公的なリハビリテーションセンターというのはないので、特に伊豆地区が中心なのですけれども、リハビリテーションの専門病院というのがあるのが、主に伊豆地区に、中部ではうちのような病院。西部にもあるのですけれども、ほとんどが民間もしくは、法人のところばかりですけれども、そのようなところが中心になって福祉関係のところとネットワークを作っていく。そのような形で、特色のある専門機能というところがまず中核になっていきながら、在宅で生活されている方々もしくは診療所等と連携を取っていきながら、静岡県の在宅生活の方々のリハビリテーションサービス、在宅サービスの底上げをしていく目標を掲げています。

 地域リハビリテーション広域支援センターは、平成14年4月現在で4ヶ所。東では中伊豆リハビリテーションセンター、中部地区の静岡市域ではうちの静岡リハビリテーション病院、志太榛原地域では藤枝市立総合病院、西遠地区では浜松市リハビリテーション病院という4ヶ所が指定を受けていまして、この4ヶ所はそれぞれネットワークを全然作っていないのです。残念ながらそれぞれ独自に動いています。

 これは、理学療法士会の理事としては、これからネットワーク作りをしていかなければいけないという課題を持ってはいるのですけれども、それぞれが独自に各地区で動いている現状というのは、残念ながら1つの問題としてあります。けれども、今現在、広域支援センターというものが、実践的な動きで各地域の福祉職の方々に対してのサポートをしていることになっています。以上です。ありがとうございました。

橋本 ありがとうございました。今の報告で、今日のパネリストの方々のそれぞれの活動のフィールドの違い、またバックグラウンド、職種の違い、関わり方の違いなどがおわかりになっていただけたのではないかと思います。

 

●誰が言い出して住宅改修はスタートするのか。

橋本 では早速、住宅改修のお話について意見を交換したいと思うのですが、まずこれだけ所属が病院でいらしたり、介護支援専門員でいらしたり、今日西村さんは施工事業者の代表ということでご発言もいただけるということですので、少し今いろいろなお話を伺えると思います。

 住宅改修が入院中であったり、在宅で過ごしていらっしゃる場合といろいろありました。誰が一体住宅改修をしようと言い出すのか、またはしたらどうかと勧めて実現に動き出すのか。入院中はご本人が病院にいらっしゃるので、ご本人が必要を感じるのか。帰宅に向けて家族が不安を感じてその要望をなさるのか。それとも病院の理学療法、作業療法のスタッフが、最初にそれをお勧めになるのか。微妙に違うと思うのです。

 その辺を、住宅改修また福祉用具を含めてご発言いただいて結構なのですけれども、その辺を少し深めたいと思います。まず、簡単に秋山さんからいかがですか。

 

秋山 ケースバイケースだと思います。当院では先ほどお話させていただいたように、在宅介護支援室の方が在宅の状況をきちんと把握しまして実施の有無を決定しています。

 

橋本 それは、訪問をして。

 

秋山 いえ。ご家族の方やご本人と話をして。

 

橋本 それは、聞き取り面接ですね。

 

秋山 はい、面接調査をしまして必要に応じて訪問を計画します。支援室はフットワークが軽く、僕らのように2足の草鞋をはいているわけではないので、その辺、専門に動き回りながら状況を確認して、必要なケースに限っては訪問指導の計画がきます。コーディネートをきちんとやってくれている場合には、早目早目の対応ができるということです。

 

橋本 そこの必要がある場合の「必要」とは、誰が感じるかというのが、実はすごく大切なのかなと思うのですけれども、これがケースバイケースということですね。

 

秋山 そうですね。やはり、在宅に帰られる場合に不安を感じるご家族の方がいらっしゃいますから、その時は、とにかく身体的な状況と見比べながら、「このようなサービスがありますけれどもどうしますか」という形でオリエンテーションをしていくと思います。

 

橋本 なぜこのことにこだわっていくかというのは、先ほどの基調講演の太田先生のお話の中にも、「日常生活は社会生活を送るための土台である」という言葉がございました。そのために、どのような日常生活を送るかの環境作りとして住宅改修が位置付けられるのですから、誰が気付き、どこで必要があると考えるかというのはすごく重要で、そこが出発点かなと思う次第なのです。深沢さんいかがですか。

 

深沢 私は最近、現実に入院していらっしゃる方のご家族から「ケアマネージャーになって下さい」と頼まれまして、2度ほど病院の方を訪問させていただきました。その中で、ご本人はまだそのような意識はほとんどおありではないのですが、家族の方が、家に帰ってくれば、例えばベッドが必要か、段差の解消はどうしよう、介護する時にどのようにしたらよろしいのか、どうしたら母は楽に在宅生活を送れるか、というご相談を受けました。この場合は、病院のソーシャルワーカーさんから「考えた方がいいよ」というご指導があって、「ケアマネージャーを決めた方がいいよ」ということで、たまたま近所だったので、私の方に来て相談して下さったのです。いろいろな連携が必要かなと思いますし、

 また違う方は、ご本人が若い方なので、入院中でもご本人が意識的にどのようにしたらいいかを考えておられた。リハビリテーション病院に入院されていた方なので、お宅をPTさんが訪問されて、PTさんのご指導もあってケアマネージャーに振られてきました。こうした連携がとても大切なのだと思います。